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3話「東京湾の春(前編)」

ライター:南無


モスモス編集部のO氏から電話があったのは、
私が高校生になってすぐの4月のことだったと思う。
あるいは春休み中だったかも知れないが、そこら辺の正確な記憶は無い。
電話がかかってきたのは確かだが、家族が取って私に換わったのか
私が直で出たのか、それもはっきり覚えていない。

電話の内容はMVP受賞とそれに併せた取材の申し込みだった。
それを伝えられた私は驚きのあまり声を失うことも無く、
かといって喜びの涙を流すわけでもなかった。
もともと私は感情の起伏に乏しい人間だし、
とっさの出来事に敏感に反応する神経も持っていない。
いろいろな感情がごちゃ混ぜになった、「はぁ・・」というのが、
第一声だったような気がするし、違うとしても大差の無いリアクションだったと思う。

その当時、自分がMVPを受賞するとは思わなかったと言えば嘘になる。
大体1号に1つ位の割合で作品が採用されていたから、「もしかしたら」とは考えていた。
ただ大賞を受賞したのは1回だけだったし、さくら氏のようには自分が誌面を盛り上げている
という感じも無かったので、MVPになれなくてもそれはそういうものだろうとも考えていて、
ちょうど五分五分な気持ちだった。

会って話が聞きたいということになったが、モスモスというものの認知度や
人気に対してあまり意識していなかったこともあり、後先あまり考えずに
「まぁいいですよ」的な軽いノリで了解してしまった。


取材はある日曜日に(ある意味当然だが)モスバーガーにて行なわれることになった。
実家から一番近いところの店で、ということになり
その店がある駅の前で待ち合わせることになった。
ただその店は、私が普段使っている最寄駅の一つ隣の駅前にあった。
 (以前は最寄り駅の前にもモスがあったのだが、数年前に閉店してしまっていた。)
最寄駅といっても実家から駅までは徒歩とバスで20分ほどかかり、
そこから1駅だけ電車に乗るというのも面倒だったので、
私はその店まで自転車で行くことにした。
 (ちなみにこの自転車はそれから3年後、盗難に遭うことになる。)

自転車を使ったせいで少し遅刻してしまった私を待っていたのは、
編集部のO氏とF氏だった。店に入って話をすることになり、
 「好きなもの頼んでいいよ」と言われたが、
緊張していた私は飲み物を注文しただけだった。
今にして思えば、何を注文しようが経費として落とせたわけだが、
当時の私はそんなことを思いつくはずも無く、ただただ遠慮してしまっていた。

そして取材がはじまった・・・

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