sevencatsさんがアエプから車を出すと、増田さん夫妻はわざわざ店の前に出て見送ってくれた。
さぁ、いよいよ2年前からの悲願だったシゲチャンランドへ行くことになる。
アエプからランドまでは車だと結構近い。国道沿いに赤い建物が見えてきた。
シゲチャンランドだ。
その日は10月末にしては暖かい天気で雲ひとつなく晴れ渡っていた。
ランドの建物はそんな中にあって回りの風景に溶け込まず、むしろ青空とのコントラストを楽しんでいるかに見えた。
sevencatsさんが流木がつまれた駐車場に車を止め、車から降りるとしばし感慨を確かめるように立ち尽くしていた。
遂にやってきたんだ!と。その様子を見て「ふふふ」とsevencatsさんが微笑んだ。
奥からゆっくりと大西さんが歩いてきた。
いままで写真でしか見ていなかった方が目の前にいると現実感が失われていくような変な気分になった。
大西さんには昨日sevencatsさんが私が取材に同行する旨を伝えてくれていたらしい。
ぎこちない挨拶をしてから、とにかく作品を見てまわることにした。
アイ・ハウスと名付けられた小屋に入ってその空気に圧倒された。
凛としていて、それでいて作品たちは今にも動き出しそうだった。
ひとつひとつの作品をじっくりを見ていった。幼い頃、祖母の家に泊まった時に
寝ながら見上げた天井の木目が何かの目に見えてきて怖かったこと、
客間に飾ってあった木彫りの置物が怖かったこと。そんな記憶が不思議と蘇ってきた。
ひとつひとつの小屋を見てまわり、私はそれを出来る限り、目に、記憶に焼き付けておこうと懸命になった。
美術作品はよく見るほうだけれど、こんなに熱心に見てまわるのは初めてかもしれない。
一通り見てまわった後、ココハウスでグッズを買うことにした。
折角来たのだから、後で「これを買っておけばよかった」と後悔したくはない。
ここはがっつりオトナ買いしようと決めていた。ココハウスにはモスモスのバックナンバーや、
食器やテレカなどのモスモスグッズ、大西さんやランドを紹介した本も展示されていた。
出来ればまるごと買占めたいくらいだが、そういうわけにもいかないのでどれを買うか入念に物色し、
本やハガキ、そしてピーナッツマンの置物など7000円強をオトナ買いした。
「これにします。」とココさん(大西さんの奥様)に会計お願いした。
ココさんがいるレジの上には昔大西さんがデザインした坂本龍一のレコード(SUMMER NERVES)が飾られていた。
「これ、CD持ってるんですけど、アナログで見るのは初めてですね。」
「これね。昔はレコードのジャケットって大きかったんだけど、今は小さい紙になっちゃって。」
「昔のレコードジャケットは飾っても恰好いいですよね。僕歳のわりにYMOとか好きだったんで
中学生の時にこれ見てたはずだったんですけど、後の作品と同一人物が作ったとは思わなかったんです。」
ココさんはにこやかにひとつひとつの品物を袋につめてくれた。
それともう一つ、大西さんにお願いしたかったことがある。
リュックサックから持参してきた大西さんの画集、「メニー&ベリー」を取り出した。
「すいません、ここにサインしていただけませんか?」
もちろん筆ペンも持参してある。
「このページでいい?」
「はい、『ブロイラーさんへ』でお願いします」
大西さんはそこらにあった紙で試し書きをした後、
「ブロイラーさんへ 大西重成」
とさらさらと書き上げた。
大西さんの毛筆は本当に味があって素晴らしかった。
戻る<< >>進む
SEO | [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送 | ||