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物言わぬ雄弁者の群れ〜シゲチャンランド〜(3)

ライター:ねこん


ココさんや他の来園者になだめられて
那由多(長男)は落ち着いてきたようだった。
 「この中は暗いからね…泣く子が多いんですよ」
シゲチャンはそう言いつつ悪戯好きの子どものようにニッと笑った。

とりあえず明るい所へ、というところだが相変らずの霧雨なので「アイハウス」へ。
那由多はさっきまでのベソかきはどこへいったのかというように急に学芸員になる。
 「これはペンギンザウルス」「これはワニノコドン」…
なにやら一人ひとり紹介しててく。

ここはランドの中でもギャラリーの様相の強い小屋、
『もりのおもいでばなし』に登場する 主に流木や朽木の類を本体とする奴等がいる。
木肌の質感と相まいユーモラスながらも実在の生物のようです。
白い壁と白砂を敷き詰めた足元、和風の趣きもあり、
連中の強烈な存在感で「謁見の場」のイメージ。
諸誌で紹介される率の高い「チドリア氏」もいます。
酔っているようなポーズと裏腹に強面ですが
那由多は波長が合ったのか当人の気持ちは別として
「キノコザウルス」と呼んでいました。(当時恐竜マニアだったので)


【シゲチャンランドの海】

シゲチャンランドに海があるのを知っていますか?
北海道の内陸で標高もそこそこあり、
5月でも日陰には残雪がけっこうみられる津別町。
ランド内には小川もありますが池とか湖の類ではありません。
ランドの入口付近や各ハウスには海から来た奴等がいますが
彼らのことでもありません。

その海は「ヘッドハウス」前のランドの柵の向こうにあります。
「国道240号線」別名「釧北国道」
釧路方面と北見方面を結ぶ観光バスもよく通る道…
それが何故、海なのか?
ランドを一巡りして「ヘッドハウス」まで来ると
入口のテラスにいい具合にバカンスシートがあります。
ここに座ってくつろいでいると正面を行きかう車の音が
潮騒に聞こえてくるのです…。
貝殻に耳をあてて「海の音だ!」というような事ですが、
舗装道路を走る自動車の通過音に海を感じてしまうのです。

人生の数十年間、社会人として心に被せてきて、TPOに合わせて
着替えるべきだった洋服が何時しか取り替えることなく重ね着して
玉ねぎの渋皮状態になったものをいつの間にか奴等に剥がされて
ツルツルで真っ白な中身が出てしまったから車の音に潮騒に感じるほど
感受性がクリアになったのでは…。
(横にココさんのコーヒーもあっていい気分…贅沢な一杯です。)


「スローライフ」とか「癒し」とか「和み」とか慰めの手段は
いつも近くにあるんだよと何処からか聞こえた…


そして、もう一つの海「ノーズハウス」
此処は鯨の体内。暗がりのためか建物の外観より内部が広く感じ、
上方から差し込む光に浮かび上がる柱と梁が博物館の鯨の
全身骨格模型のようで、この闇は昔「ピノキオ」の絵本で見た
ゼペットじいさんの居た鯨の中の感じに思いませんか?
(シゲチャンはこの闇を意図的に作ったのかな?)


「アイハウス」で気分を良くした那由多は今度は「ヘッドハウス」へ
「モスモス」フアンには特に馴染み深い連中のいる場所です。
建物の原型をかなりアレンジして西部劇の宿場の店のような外観。
入口の扉にはビールの空き缶を開いて丁寧に貼り付けてあり、
今時のDIY家も圧巻の作りです。

「モスモス」や「メリー&ベリー」にでてくる連中はとにかく賑やか!
個性的で小柄ながらも自己主張には引けを取らない面々。
おっとりしたのから小ずるそうなやつ…自分みたいな奴もきっといることでしょう。
天井まで増殖しているため、見上げているうちに
ポカンと口を開けている自分に気が付きます。
ランド内で一番時間を忘れる所。


ところで野獣のように興奮して走り去った瑠沙那(るしゃな:次男)は何処に…?

そのころ「ココハウス」では飢えた野良猫のように
飴をたかっては逃げていく子どもがひとり…

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